2015年11月24日

【☆はがき一枚の国語】 同音異義語(同音別語) 大喜多俊一


同音異語としてよく擧げられる漢語に「コウコウ」といふのがある。
今、用ゐてゐるワードプロセッサではまづ次の語が現れる。高校・孝行
・航行・口腔・後攻・膏肓である。手元の国語辭書によれば、このほか
に、坑口・後項・港口・硬膏・皓皓・鑛坑・惶惶などが見える。

次に多い同音異語には「ショウカ」「タイショウ」がある。例語は、それぞれ、
唱歌・消化・消火・商家・昇華・商科・上下・消夏・小過、
對象・大正・大將・對照・大勝・大賞などなどで、
このやうな漢語の異語は文字で示せば誤解なく傳はるが、同音であるだけに、口頭ならば前後の文脈を把握しなければならない。
同音異語は使ひ方に注意する必要があるとともに、やはり漢字をよく知つてゐることが基礎となる。

国語辞典で最も多くの語が立項されているのは行の語で、その中でも最も多いのはで始まる語である。
次に多いのが、カ、コ、ハで始まる語で、同音異語も當然これらの音で始まる語に多い。
「ショウニン」「ハイカン」「カンコウ」という音の漢語にはどんなのがあるか。それ
ぞれ競つて提示しあふのも知的ゲームとしておもしろい。
母音で始まる語では、ア、イで始まる語が多く、中でも「アン」「イン」のあとにの續く語が目立つ。漢語が入つたあとの日本語の音體系に關心を寄せてみる。
posted by 國語問題協議會 at 15:01| Comment(0) | 大喜多俊一

2015年11月12日

きゃりこの戀(15) ジパング    雁井理香(かりゐりか)


きゃりこ:
小泉進次郎のこと、中国語では、なんて呼ぶんですか。
オスカー:
好きになつたの? 若様が。
きゃりこ:
私は外の女とは違つて、権力者には惹かれません。誰でもいいんだけど、日本人の名前を中国語でどういふか知りたかつただけ。
オスカー:
権力者には惹かれないのに、外人には惹かれるの? 多少ましだけど、やや軽薄。中国でも、字で書くときは、「小泉進次郎」なんだけど、発音が大違ひ。Xiaoquan Jincilang(シャオチュアン・ジンツーランぐ/「ン」はn、「ん」はng)
きゃりこ:
音読みだと「せうせん・しんじらう」だから、似てるね。
オスカー:
そりやあ、古代中国語の真似をしたのが音読みなんですから、似てなかつたら大変ですよ。
きゃりこ:
「よしこ」とか全部仮名の場合は、どうするの。
オスカー:
櫻井よしこさんのことは、「櫻井良子」と書いて、Yingxing Liangzi(イんシん・リアんズ)と発音します。中国語のブログつて、櫻井さんのことをボロクソに言つてゐるんだけど、それでも「日本美人右翼」つて褒めて(?)ゐたのが面白かつたね。まあ、櫻井さんは本名が「良子」だから、それを宛てればいいでせうけど、もともと平仮名・片仮名の名前の場合は、それらしい漢字を宛てるやうですね。片仮名の「リカ」は「理香」にすることが多いみたい。
きゃりこ:
でも、「理香」は中国語では「リカ」とは読まないんでせう。
オスカー:
うん。雁井理香なら、Yanxing Lixiang(イェンシん・リーシアん)と発音します。片仮名の「リカ」でも、漢字にしないわけには行かないから、日本でよく使はれる「理香」の字を宛てます。漢字は日本式にするのですが、発音はどうでもいいといふことになつたのでせう。
 感心したのが、「みく」という平仮名の女の子の名前に、「実紅」を宛ててゐたこと。中国語ではShihong(シーホゥん)だから全然音が違ふ。多分、日本人に、「みく」つて名前は漢字はどうなるの、つて訊いたのでせうね。
きゃりこ:
「きゃりこ」はどうなるのかしら。
オスカー:
「小婆香」(シャオムーシアん)でせうね。
きゃりこ:
?????。まさか、「をぼかた」ぢやないよね。なんだろ。
オスカー:
読者もここは分からなくて結構です。
きゃりこ:
ところで、中国語では、「日本」のことは「倭」つて言ふんでせう。
オスカー:
それは大昔のことですよ。今では「倭」の字は複合語の中でだけ使はれます。中日辞典を引くと、「倭刀」、「倭瓜」、「倭寇」の三つしか出てゐない。
きゃりこ:
「倭刀」は日本刀のことでせう。「倭寇」も、私、おばかだけど知つてる。「倭瓜」が分からない、「日本の爪」つて、ひよつとして「琴」のことかな。和琴とかあるぢやない。
オスカー:
「爪」(つめ)ぢやなくて、「瓜」(うり)。
きゃりこ:
漢字つて、紛らはしくていやね。「日本のウリ」なら「柿」のことかしら。
オスカー:
はづれ。「かぼちや」のこと。かぼちやつて、カンボジア原産だから「かぼちや」といふんですよね。「日本の瓜」がどうしてかぼちやなのか分からない。日本経由で中国に入つたのでせうね。
きゃりこ:
ともかくも、日本のことを、ふつうは「倭」とは言はないのね。
オスカー:
日本のことは「日本」といふんですよ。「Riben」(リーペン)と発音します。
きゃりこ:
中国語つて、LとRの区別があるの?
オスカー:
LとRの区別はあるんだけど、Rがヨーロッパ語や日本語のRとは違ひ過ぎるので、たとへば、Andrewは「安徳魯」(Andeluアンドリュー)です。RをLで受けてる。
 だから、逆に中国語のRは、外国人にはRにもLにも聞えない。むしろ、NやJに近い。Ribenも「ジーペン」が近い発音ですね。ここから「ジパング」が生まれました。マルコポーロにはさういふ発音に聞えたのです。
きゃりこ:
最後の「グ」は何?
オスカー:
「日本国」の「国」だと言はれてゐます。現代北京語では、「国」はguo(グォ)です。
 ところで、現代北京語で、Rの音を持つ漢字は、日本の音読みでは、NやYやJで受けてゐるのが面白い。「如」はru。これが日本では「ジョ」または「ニョ」ですからね。「溶」はrongですが、日本では「ユウ」。「柔」(rou)は「ニウ」「ジウ」です。それに対して、日本語の音読みでラ行になるのは、中国語ではみんなL。楼(lou)、流(liu)、龍(long)。
きゃりこ:
「東京」の発音はどうなるの。
オスカー:
Dongjing(ドゥんジん/トゥんチん)。ピンインでは、engは「オん」。ongは「オゥん」あるいは「ウん」。
きゃりこ:
「北京」は「ペキん」でせう。「京」の字が「ジん」でなく、「キん」になつてる。
オスカー:
Peking(ペキん)は南方音の発音。ヨーロッパ人は、上海とか香港とか、南方から入つて來たから、南方音で漢字を讀むことが多くて、日本もかなりその真似をしてゐます。でも、最近は北京語で発音しようといふことで、「北京」のことを「ベイジん」とか「ペイチん」とか言つたりします。ピンイン(中国語アルファベット)はBeijing。中国語のbとpはヨーロッパ語や日本語のb, pときちんとは対応してゐないので、「ピ」でも「ビ」でも間違ひとは言へません。「香港」も南方音だから、北京語ではXianggang「シャんガん」と発音します。
きゃりこ:
中国つて広いからね。中国人同士でも話の通じないことが多いんでせう。
オスカー:
文法は同じだから、漢字で書けば分かるんだけどね。だから、中国の映画やテレビは、中国語の字幕が出ることが多いんですよ。
きゃりこ:
へええ。それは面白い。
オスカー:
日本でも昔は同じやうなことがありました。江戸時代に、陸奥国(むつのくに)から出た船が九州に漂着したことがあつたのですが、言葉が通じない。そこで----------。
きゃりこ:
そこで、筆談をしたのね。
オスカー:
うん。さういふ説もありますが、別の説に據ると、インテリらしい武士がゐたので、役人が「問ふ。汝、いづれの国よりか來(きた)れる」と話し掛けたら通じたといふことです。
きゃりこ:
さうか。文語なら通じたのか。
posted by 國語問題協議會 at 12:06| Comment(0) | 雁井理香

2015年11月04日

歴史的假名遣事始め (十一) 市川 浩

クイズで遊ぶ歴史的假名遣(十)(平成二十七年十一月一日) 市川 浩

先月のクイズ解答
翁、中、隆、弓、宮 をう、ちゆう、りゆう、きゆう、きゆう 東韻
元、原、園、猿、媛 ぐゑん:ぐわん、ぐゑん、ゑん、ゑん、ゑん 元韻
長、良、唐、岡、商 ちやう、りやう、たう、かう、しやう 陽韻
優、郵、牛、秋、鴎 いう、いう、ぎう、しう、おう 尤韻

字音假名遣を初めて體系的に明らかにしたのは、本居宣長です。宣長は契冲の假名遣に對する功績を讚へ、それを補完する形で「字音假字用格」を著しました。漢土の韻書を參考にしたこの假名遣は歴史的假名遣の中で重要な地位を確保して、今日に至つてゐます。たゞ
契冲の古文獻重視の立場から、戰後特に訓點資料といつて、書物に句讀點や返り點を始め、送假名や振假名を書込んだものの調査が進んで、幾つかの點で修正が必要となりました。その主なものは
一、「粹」、「追」、「唯」、「累」などス、ツ、ユ、ル に「ヰ」を伴ふ字音は全て「イ」、
スヰ→スイ、ツヰ→ツイ、ユヰ→ユイ、ルヰ→ルイ、
二、發音「ン」を伴ふ字音は「ン」と「ム」と區別、安、鞍「アン」、暗、庵「アム」
三、カ・ガ行音、カ・ガとクワ・グワ、キ・ギとクヰ・グヰ、ケ・ゲとクヱ・グヱを區別
可・賀「カ・ガ」、化・瓦「クワ・グワ」、機・義「キ・ギ」、鬼・僞「クヰ・グヰ」
氣・下「ケ・ゲ」、卦・華「クヱ・グヱ」
の三つです。

練習問題
字音假名遣が主題です。下記の文字の音をを歴史的假名遣表記で假名書きして下さい(問題の性質上一部慣用の宛字漢字を使つたり、送り假名を省略したりしてをります)。

腰椎、羊水、用心、洋品店
原因、縣廳、監視、自衞權
危險、狂犬、軌道、活火山
滿月、干潮、蹂躙、腦血管
posted by 國語問題協議會 at 09:44| Comment(0) | 市川浩