2016年02月04日

歴史的假名遣事始め (十四) 市川 浩

クイズで遊ぶ歴史的假名遣(十四)(平成二十八年二月一日) 市川 浩

先月のクイズ解答
書き言葉は話し言葉の記録用に発生したものであり、言語の最重要成分である「声」の正確な記述が求められる。従つて表音文字である仮名が実際の発音の変化に従って変化して行くのは当然である。

この主張に對する反論の一例擧げます。
物事には「生まれ」と「育ち」とがあり、世界中の言語が夫々特有の發展を遂げてゐます。我が國語に就いて言へば、繩文末期に成立の後長い無文字時代があり、應神天皇十五年に漢字が傳來するや早速國語音韻の表記が始りました。その内容は萬葉假名六十字母(濁音除く)の上代特殊假名遣として、記・紀・萬葉に保存されてゐます。ここまでは「書き言葉は話し言葉の後に記録用に發生した」といふ「生まれ」は扮れもない事實です。しかし平安時代になると、いろは歌に代表される四十七の假名字母に集約されますが、これは發音の變化も然ることながら、サンスクリットの文字分類を採用した所が大きく、鎌倉時代初期の「ハ行轉呼」を定家假名遣で乘切り、最終的に契冲により各時代を共軛する歴史的假名遣として完成し、一方漢字も音訓兩樣の使用により、書き言葉の發音からの獨立が達成されたのです。かうした「育ち」を無視して書き言葉の役割を、「聲の正確な記述」のみに限定する事は明らかに文化の否定に他なりません。無論「聲の正確な記述」も重要ですから國際音聲記號などの利用を否定するものではありません。

練習問題
下記の所論に問題があるとすれば、その反論を御書き下さい。(問題の性質上、敢て新字・新かなで表記してあります)。

書き言葉が大勢の人に語りかけるものである以上、現代人の殆どが読めない正字・正かなで表記すること自体読者を蔑ろにしている。すでに文語文も新漢字表記が一般的になっているし、仮名遣いも和歌等で新かなが使われているのは読者に親切という意味で当然の流れである。
posted by 國語問題協議會 at 19:52| Comment(0) | 市川浩