2016年04月04日

歴史的假名遣事始め (十六) 市川 浩

先月のクイズ解答
下記の所論に問題があるとすれば、その反論を御書き下さい。(問題の性質上、敢て新字・新かなで表記してあります)。

「現代仮名遣い」や「常用漢字」に問題がないとはいえないにしても、少くとも内閣告示となった以上は、国民として従う義務がある。徒らに自説を主張して告示に従わないのは順法の精神に欠けるといわざるを得ない。

この主張に對する反論の一例を擧げます。

「現代かなづかい」及び「當用漢字」は昭和二十一年十一月十六日に「内閣告示」として告示され、その後「現代仮名遣い」が同六十一年七月一日、「常用漢字」が平成二十二年十一月三十日に夫々改訂告示となつたものが今日有效となつてゐます。これ等の日附はすべて現行憲法公布(同二十一年十一月三日)の後であることに注目して下さい。さう、現行憲法は「正字・正かな」表記なのですが、「護憲派」の方々はこれを全く無視してゐます。
内閣告示はあくまでも内閣の所管である國の各行政機關に對するものであり、その實施に就いては「内閣訓令」によります。しかし告示の性格を規定する「前書き」第一項では適用對象分野として「法令、公用文書、新聞、雜誌、放送など一般の社會生活において現代の國語を書き表す」ためとなつてゐて、「教育、出版」を除外してゐるのは當然として、「新聞、雜誌、放送」など本來「行政機關」から獨立の分野にまで適用對象を廣げてゐます。特にこの三分野は行政の介入を何よりも嫌ふのに、不思議なことに一言の異義申立もないどころか、鞠躬如として最も嚴密忠實に從つてをり、正字・正かなの論文などは絶對に受附けません。
さて同第二又は三項には「この假名遣は、科學、技術、藝術その他の各種專門分野や個々人の表記にまで及ぼさうとするものではない」と明記してあるのですが、上記の三分野を始め、民間では殆ど無視してゐるのが實態です。この現實を踏へ、告示に對する官府の公式見解は「内閣に對してのみ強制力を有するが、他の分野で之を適用することを妨げない」となつてゐます。從つて「他の分野で適用しない」ことも容認してゐるのです。正字・正假名實踐は法律的に何の問題もないのです。
練習問題
下記の所論に問題があるとすれば、その反論を御書き下さい。(問題の性質上、敢て新字・新かなで表記してあります)。

字音仮名遣いは漢土の発音に準拠しており、日本語とは関係がない筈である。それを然も「む」と「ん」、「き(ぎ)」と「くゐ(ぐゐ)」、「け(げ)」と「くゑ(ぐゑ)」の書分けを強制するのは戦後の「国語簡素化」の趣旨にも反する。
posted by 國語問題協議會 at 14:41| Comment(0) | 市川浩