2016年05月01日

歴史的假名遣事始め (十七) 市川 浩

クイズで遊ぶ歴史的假名遣(十七)(平成二十八年五月一日)

先月のクイズ解答
下記の所論に問題があるとすれば、その反論を御書き下さい。(問題の性質上、敢て新字・新かなで表記してあります)。

字音仮名遣いは漢土の発音に準拠しており、日本語とは関係がない筈である。それを然も「む」と「ん」、「き(ぎ)」と「くゐ(ぐゐ)」、「け(げ)」と「くゑ(ぐゑ)」の書分けを強制するのは戦後の「国語簡素化」の趣旨にも反する。

この主張に對する反論の一例を擧げます。

漢字が傳來してから、我が祖先は早速これを習得したのですが、漢字には同じ形の文字はその讀みの發音が地域により異なつても意味は共通といふ特性があり、これが「漢字文化圈」の成立に大きな役割を果しました。實際「上海」は「シャンハイ」が漢土の發音に近いのですが、日本では「シャン」が「シャウ」、「ハイ」が「カイ」です。この時點で「シャウ」と早くも字音假名遣が發生してゐるのです。この字音假名遣を體系的に纏めたのが江戸時代の本居宣長です。これは今日まで有效ですが練習問題の例に擧げたものは、宣長の方針に徹底を缺くものを戰後に修正したもので、漢土の百八の韻との關聯が明確になると同時に、上古の漢文訓讀の訓點資料との整合性も向上してゐます。これらは宣長説を細分化するものですが、逆に「類」や「垂」などを「るゐ」、「すゐ」から「るい」、「すい」に統合したものもあります。字音假名遣を學ぶと漢字の理解も進みますので是非試して下さい。此の問題は次にも續きます。

練習問題
下記の所論に問題があるとすれば、その反論を御書き下さい。(問題の性質上、敢て新字・新かなで表記してあります)。

結局字音仮名遣を含む歴史的仮名遣は学習困難な代物で、歴史的仮名遣の時代には、人々が如何に苦しんだか。今の若い人が旧仮名遣いに違和感を感ずるのは当然である。
posted by 國語問題協議會 at 10:48| Comment(0) | 市川浩