2018年01月31日

紀元節

作詞 高崎正風
作曲 伊澤修二
一 雲に聳(そび)ゆる高干穂の、
高根おろしに、草も木も、
なびき伏しけん大御代を、
仰ぐ今日こそ、たのしけれ。
二、海原なせる埴安(はにやす)の、
池のおもより猶(なほ)廣き、
恵みの波に浴(あ)みし世を、
仰ぐ今日こそ、たのしけれ。
三 天つ日嗣(ひつぎ)の高御座(たかみくら)、
千代よろずよに動(ゆる)きなき、
基定めしそのかみを、'
仰ぐ今日こそ、樂しけれ。
四、空にかがやく日のもとの、
よろづの國にたぐひなき、
國の御柱立てし世を、
仰ぐ今日こそ、樂しけれ。
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2018年01月26日

「つたへること・つたはるもの」A 漢語で傳へる「名文」より、ひらがなで傳はる「達意の文」を 原山建郎

かつて雜誌『主婦の友』の取材記者だつた私の文章スタイルは、いまでも『主婦の友社の用字用語』(入社時に貸與され、退社時には返却する、文章作成の手引書)が基本である。
@ 漢字の讀み方が2種類あるときは、原則として「開く」、つまり「ひらがな」表記にする。=○〜するとき(時)、○〜とい(言)ふ、○〜すること(事)、○子ども(供)は、いずれも時(じ)・言(げん)・事(じ)、供(きょう)と読まれるおそれがある。したがつて、讀み違いしやすい漢字表記ではなく、讀み方がひと目でわかる「ひらがな」表記に替へたほうがよい。
A 同じ言葉でも、時と場所と使用目的によつて、漢字、ひらがな、カタカナをうまく使ひ分ける。●桜の花。さくら貝。あいつはサクラだ。●子ども。子供。こどもの日(五月五日)。コドモまんが。/●薔薇の花。バラ科サクラ属。ちりぢりばらばら。●大人料金。おとな(大人)しい。オトナの女性。
B  常用漢字表にある漢字であつても、「ひらがな」表記にした方が讀みやすい。=☆出來る→できる、☆續く→つづく、☆〜餘り→あまり、☆〜程→ほど、☆予め→あらかじめ
C  接頭語的にあるいは、補助動詞として使はれるときは、「ひらがな」表記が妥当である。=◆とり(取り)壊す、とり(取り)亂す、◆ご(御)親切に、◆繪本を讀んでみる(見る)、◆來てほしい(欲しい)、◆買つてくる(來る)、◆Kといふ(云ふ)人、

大學時代、所謂(いはゆる)名文を書くためには、日ごろから教養を磨くだけでなく、就中(なかんづく)難解な漢語を用ゐる心がけが肝要(かんえう)で、それが即ち(すなはち)一流の書き手だと思つてゐた私が配屬された『主婦の友』では、「ひらがな」だらけの文章を書かされた。そんなとき、先輩記者から誘はれる酒場(入社後1年間はタダ)での飲みニケーションは、貴重な實踐的文章教室となつた。
★所謂→よくいはれる、★就中→なかでもとくに、★肝要→たいせつ、★即ち→つまり
なるほど、どれも當たり前の「ひらがな」語ばかり。これではまるで小學校時代の國語の時間に逆戻りである、などと少し酔ひのまはつた頭で考へてゐると、先輩から痛棒の一撃を食らつた。「難しいことを難しく書くのは、誰でもできる。難しいことをわかりやすく書くのが、雑誌記者の腕だ」
後年、『わたしの健康』(現在は『健康』)の編集長を務めるやうになつてから、たとへば醫學・健康分野の記事を書くときに重要なことは、その分野の専門的知識を得るための勉強ではなく、取材先の醫師や榮養士に「わかりやすく言ふと〜ですか?」「たとへば〜のやうなことでせうか?」と粘り強く質問して、一般讀者に傳はるレベルまでトコトン發み碎く「達意の文」だと気づかされた。『主婦の友社の用字用語』に書かれてゐる「料理記事で注意を要する点」は、そのまま「達意の文」の基礎編となつてゐる。
▲料理記事は、材料と作り方、盛り方、食べ方、(調理の)コつ、応用、献立などから成つている。材料に出てゐて、作り方でふれてゐないなどといふことのないやうに。調味料などで、材料の中に書き入れないことはあるが。▲調理過程の説明に不用意はないか。煮る、燒く、もどすなどといふ必要作業の叙述が抜けてはゐないか。▲値段、所要時間およびその表記についての吟味。
難しい専門用語(漢語)で傳へる「名文」よりも、内容を發み碎いたひらがなで傳はる「達意の文」を心がけたい。
(武藏野大學非常勤講師『ゴム報知新聞』電子版コラム (2016年10月11日)

posted by 國語問題協議會 at 11:00| Comment(0) | 原山建郎

2018年01月19日

きゃりこの戀(52) 教育敕語(二) 雁井里香

オスカー:
 前回の最後に教育勅語の全文を載せました。読みと意味を説明したい所ですが、Wikipediaを見れば分かるから、もう説明しません。
 ちょっと重要な漢字と語句だけ、つまんでみませう。
  「惟」は重要な訓(よ)みが二つあります。「ただ(只)」と「おもふ(思)」
  「皇祖(くわうそ)皇宗(くわうそう)」は「天照大神および代々の天皇」
  「肇」は「始める」。ここでは「ちんおもふに、わがくわうそくわうそうくにをはじむることくわうゑんに、とくをたつることしんかうなり」
  二つ目の文の中程は、「よよそのびをなせるは」
きゃりこ:
 「爾」が分からない。
オスカー:
 「なんぢ」。
きゃりこ:
 「なんぢ」は「汝」ぢやないの。
オスカー:
 同じ訓みの漢字がいくつもあるのです。「なんぢ」と讀む漢字の重要なものを竝(並)べておきませう。他にもたくさんあるのですが。
   汝 焉 爾 女 而 若
 そのちょっと後、「一旦緩急」以下は、「いったんかんきふあればぎいうこうにほうじ」
 「緩急(かんきふ)」は「まさかのこと」。何か大事が生じた時には、国の爲に盡しなさい」
きゃりこ:
 私が文法の話しても嗤はないでね。
 「大事が生じたので」ではなく、「生じたならば」の意味なのだから、「緩急あらば」と「未然形+ば」にしないといけなくない?
オスカー:
 おおおおお。きゃりこさんがいいことに気付きましたね。
 そのことは昔から指摘されてゐて、今でも「誤用論」と「擁護論」があつて決着がついてゐません。しかし、僕は、文法的な間違ひではないと思ひます。高校文法では、「未然形+ば」は「〜ならば」で、「已然形+ば」は「〜なので」と言はれてゐますが、「〜のときには・〜の場合には」と輕く云ふ場合には、「已然形+ば」が使はれます。
 擁護説も戦前からあつて、「漢文の『〜なれば則はち』の意味であつて間違ひではない」などと言はれてゐましたが、別に漢文を持ち出さなくても、本来の文語文法でもこの形で正しいのです。
 一番よい例が、有間皇子の辞世、
   「家にあれば笥(け)に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る」
 「家にゐれば食器に盛るのに」ですから、「家にあらば」としなければをかしいやうに思ひますが、輕い「家にゐるときには」といふほどの意味なので、完全な仮定にはしてゐないのです。
 この部分の英訳が面白いですよ。明治政府の公式英訳です。
Should emergency arise, offer yourselves courageously to the State; and thus guard and maintain the prosperity of Our Imperial Throne coeval with heaven and earth.
きゃりこ:
 またおバカの私が、不自然な賢さを発揮するよ。
 書き出しは仮定法の倒置。If emergency should arise(非常事態が発生したならば)の意味ですね。その後は、「offerせよ、そしてguardせよ、またmaintainせよ」と命令形が三つ並んでゐるんだね。
オスカー:
 おおお、たいしたもんだ。
きゃりこ:
 違ふよ。私ぢやなくて、雁井さんが言つてゐるんだよ。私はズルなんだ。将棋の公式戦で、スマホの将棋ソフトを見るやうなもの。寧々とは違ふんだよ。くそッ、ぐれてやる。
 ついでに、雁井さんから電波が飛んで來たから、英語を直訳してやるね。
 「非常事態が出來したならば、勇敢に国家の爲に身を捧げよ。そして、天地とともに永続する皇位の繁栄を守護し維持せよ」
 自分で言つたのに、意味が分からないんだけど、「出來したならば」って、何? 「できしたならば」って讀むの、それとも「しゅつらいしたならば」って讀むの。
オスカー:
 「出來」は「しゅったい」。事件などが発生すること。「椿事(ちんじ)出來(しゅつたい)」と言つたら、「とんでもない出来事が持ち上がること」ですから、覚えておいてね。
 あとは、「謬ラス」と「悖(もと)ラス」だけ説明しませう。「謬」は「誤謬」といふやうに、「あやまる」(間違へる)。「悖」は「背(そむく)・違(たがふ)」の意味です。「時代を超越して誤ることなく、また世界にも普及させて違背することがないやうにせよ」です。
きゃりこ:
 そしたら、「謬ラズ」と「悖ラズ」でせう。濁点が抜けてるよ。
オスカー:
 戦前の天皇や政府の公式文書は、「句読点・濁点を打たない」といふ面白いルールがあつたのです。
きゃりこ
 あきれた。無意味なこと!
オスカー:
 最後にもう一つ。一番最後の「庶幾ふ」は何と讀む?
きゃりこ:
 「しょきふ」。なんぢや。
オスカー:
 《音讀み》して、「ショキす」ならいいけど、「ふ」が附いてゐるでしょ。
 「こひねがふ」つて讀むの。「乞ひ願ふ」といふこと。発音は「こいねがう」ではなく、「こいねごう」がいいでせう。
きゃりこ:
 なんで、「庶幾」をそんなふうに讀むの。
オスカー:
 漢文(古典中国語)で「庶幾」がhopeやwishの意味だから。



posted by 國語問題協議會 at 15:03| Comment(0) | 雁井理香