2021年02月27日

かなづかひ名物百珍(5)「けえらん」/ア一カ

けえらん
 佐賀に「けえらん」といふ菓子がある。さぞや「鷄卵」が入ってゐるかと思ふと然に非ず、餡を餠でくるんだものらしい。太閤秀吉の朝󠄁鮮出兵にあたり、「勝󠄁つまで歸らん」の意󠄁味を込󠄁めて「けえらん」と名づけたといふ。牽強附會の氣もするが、慶長年間の『日葡辭書』にある「Qeiran」なのだといふから歷史は長い。

ええぢゃないか
 この「あい」「あえ」などが長音󠄁化󠄁した時にどう書くか、「べいごま・べえごま(貝獨樂)」「べらんめい・べらんめえ」など時に迷󠄁ふ語がある。「ええぢゃないか」「おめえ(御前󠄁)さん」となると「えい」ではをかしく、その言葉が生れた時代を反映するのだらう。

 もし「勝󠄁つまで歸らん」の意󠄁であったとしても、もはや「けへらん」と囘歸するのは滑稽である。「鷄卵」はもちろん「けいらん」で、この使ひ分けは現代假名遣󠄁でも全󠄁く同じなのである。「遠󠄁山景織子」といふ女優は「きょおこ」と振假名するさうで、字面を追󠄁へばなるほどさうなのかもしれないが、どうにも違󠄂和感が拭へない。
posted by 國語問題協議會 at 07:15| Comment(0) | 高崎一郎