2022年05月25日

かなづかひ名物百珍(18)「源三位ョ政」/ア一カ

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 武將にして公卿かつ歌人。「鵺(ぬえ)」を退󠄁治した傳說で著名である。上古より、ぬえ(鵺、鵼、恠鳥、夜鳥、奴延鳥)は不吉な鳴き聲の鳥とされ、トラツグミ(虎鶫、Zoothera dauma)を指したと推定されてゐる。漢字傳來以前󠄁の日本語には「う+え」のやうに母音󠄁が連續する言葉は無かったとされる。しかし「奴延」の「エ(延)」はヤ行のエであるため發音󠄁として不自然ではなかったのであらう。
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 平󠄁家物語の時代には「ぬえ」は各種の動物が合體した怪物と看做され、射ぬいたョ政は武名をあげた。藤󠄁原ョ長から譽められた
「ほととぎす名をも雲居にあぐるかな」
に下の句をつけ、
「弓張り月のいるにまかせて」
と返󠄁した。「(弓を)射る」と「(月が)ゐる」では假名遣󠄁が混同してゐる。
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 もう一つ著名な逸話として、晩年に至っても位階が正四位下であったところ、
「のぼるべきたより無き身は木の本にしゐをひろひて世を渡るかな」
の歌を詠んでめでたく從三位に昇進󠄁したと『平󠄁家物語』四卷「鵺」に載ってゐる。この「しゐ」は「四位」と「椎(しひ)を拾ひて」をかけたものだが、ハワ行の假名遣󠄁を混同した具󠄁體的󠄁な用例として國語學上でも有名である。
posted by 國語問題協議會 at 13:00| Comment(0) | 高崎一郎