奈良縣の古地名。歌枕の地。現在の橿原市十市(とをいち)町。『和名抄』に「止保知(とほち)」とあり、また和歌でしばしば「遠󠄁(とほ)い」の掛詞となるが、これは漢字表記「十(とを)市」と矛盾する。中世以降は「とをいち」が多い。十市皇女は天武天皇の第一皇女。
「更󠄁けにけり山の端近󠄁く月冴󠄂えて十市の里に衣打つ聲」(式子內親王、新古今和歌集485)などは代表的󠄁。『枕草子』にも「里は・・十市の里」と列擧されてゐる。各種注󠄁釋書を見ても、この矛盾についての解說は未見である。
寫眞は十市御縣坐~社(とをちのみあがたにますじんじゃ)。