2025年03月08日

日本語ウォッチング(75)「貧慾」/織田多宇人

貧慾
 「貧慾にむさぼり續け……」と言ふ風に某雜誌に書かれてゐたが、貧慾は「貪慾(どんよく)」でなければならない。字體が似てゐるために誤󠄁り易いが、「貧」は音󠄁が「ヒン、ビン」で訓が「まづしい」であるから、貧慾では「ひんよく」と讀むしかなく、意󠄁味も慾が無いことになつてしまふ。一方、貪の音󠄁は「ドン、タン」で訓は「むさぼる」であるから貪慾は非常に慾が深いことになる。「むさぼる」と言ふ時に「貧」を使つてゐる例が多いのは、「貪」と言ふ漢字のあることを知らないためかもしれない。
posted by 國語問題協議會 at 09:05| Comment(0) | 織田多宇人

2025年03月02日

かなづかひ名物百珍(43)「づばいもも(椿桃・油桃)」/ア一カ

[づばいもも]
づばいもも(椿桃・油桃)

 近󠄁年は「ネクタリン」の方が通󠄁りがよいだらう。桃の一種だがやや李(すもも)に近󠄁い。「づばい」は「つばき(椿)」の轉とされ、「づんばい」「づばいぼう」などとも呼ばれる。「油桃」の名は表面に毛がなくつるりとした肌ざはりに由來するらしい。

 「づんばい(飄石)」は石つぶて、あるいはその遊󠄁びを指す語だが、恐󠄁らく桃と關係はないだらう。今ではもう身近󠄁な語とは言へまい。
[ずんばい]
[ずんばい]
 鹿兒島方言で「ずんばい」は物がたくさんある意󠄁で、「ずっぱり」の轉である。こちらは燒酎の銘柄󠄁などで大いに活用されてゐる。
posted by 國語問題協議會 at 11:15| Comment(0) | 高崎一郎