2025年04月05日

かなづかひ名物百珍(44)「をくづれ水仙ク」/ア一カ

[をくづれ水仙郷]
[をくづれ水仙郷]
 千葉縣鋸南町の公園。一帶は江戶時代から水仙の栽培が盛󠄁んで、村名にちなみ「元名(もとな)の花󠄁」と呼ばれたといふ。「をくづれ」の稱は周󠄀邊の地名「大崩󠄁」に由來するが、何かの古文書の表記をそのまま採󠄁用したらしい。正しくは「おくづれ」とすべきであらう。

 ただし「大原女」をオハラメ、明󠄁日香村「小原」がオーハラであるやうに、大小逆󠄁轉したの讀み方は意󠄁外に多いから、ひょっとすると「小崩󠄁」であった可能性も無いとはいへない。とはいへ「本來は」ばかり追󠄁及󠄁しても詮ないことが多く、通󠄁常は漢字表記との調󠄁和があればよしとなる。

 所󠄁在地の現稱は「安房󠄁郡鋸南町大崩󠄁(おくずれ)地先」で、古くから渴水に惱まされ棚󠄁田が多かったといふから、急󠄁峻で崩󠄁落しやすい地形であったやうだ。昭和61年には大崩󠄁川(佐久間水系)をせき止めて佐久間ダムが完成󠄁し、その周󠄀邊整備として水仙公園が誕生した。ちなみに天龍󠄁川の佐久間ダムは別地である。
posted by 國語問題協議會 at 07:30| Comment(0) | 高崎一郎