2016年01月27日

【★はがき一枚の國語】 國語教科書第一頁の印象 @小學校   大喜多俊一

サイタ サイタ サクラガ サイタ
の一文は兩開き二頁に滿開のソメイヨシノの繪を背景に書かれてゐた。力タカナ先習
の時代のことであつた。一世代前の教科書は「ハナ ハト マメ」、一世代後は「アカイ アカイ アサヒ」、そのあとは「おはなをかざる みんな いいこ」という言葉から始まつた。
サクラ讀本の特色は、繰り返し表現を十數ページにわつて取り上げて、言葉の學習の方途の一端を示したことである。「コイ コイ シロ コイ」「オヒサマ アカイ アサヒガ アカイ」等。

「サクラ讀本」の世代もすべての人が八十歳を超えてしまつた。教科書が國定であつた時代、昭和八年から十年間用ゐられた「小學國語讀本 巻一」の最初の文言は「サイタ サイタ サクラガ サイタ」であつた。この短い文章が大方すべての児童に覺え込まれ、この鮮やかな印象のゆゑにか、この教科書は後々まで「サクラ讀本」と呼ばれてきた。
文言は單純なやうに見えながら、實はよく考へられた言葉であることは、大人になつてから理解されたことであつた。入學を喜ぶ一年生に與へられた季節の言葉が、生命の囘歸を自覺させるものであることがカギであり、それを簡潔な反復表現で表してあるところに鮮烈な印象を與へるのである。まことの逸文であると言はれよう。開巻第一頁というのは
いつまても印象に殘るものである。
posted by 國語問題協議會 at 21:16| Comment(0) | 大喜多俊一
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