2016年03月21日

【☆はがき一枚の國語】 國語教科書第一頁の印象 A中學校 大喜多俊一

舊制中學校の國語教科書は小學校用のサクラに對比してか、富士山が登場する。萬葉集巻三にある、山部宿禰赤人の富士の山を望み、かつ稱へる歌一首ならびに反歌である。
「天地の分かれし時ゆ 神さびて 高く貴き駿河なる 富士の高嶺を天の原
振りさけ見れば渡る日の 影もかくろひ 照る月の光も見えず 白雲もい行きはばかり
時じくそ 雪は降りける 語り繼ぎ言ひ繼ぎ行かむ 富士の高嶺は」
ここで初めて和歌に長歌なる形式があることを學ぶ。
中學校で習った國語の先生の該博な知識と熱心な研究の姿勢、そして懇切な指導を得て、生徒は萬葉集のみならず、古典への誘ひを受けたことを喜び、これまた後々までのよき話題となつた。櫻の花と富士の山。忘れ得ぬよき思ひ出の一章である。

舊制中學校の國定の國語教科書は「中等國文」といつた。小學校の學習内容に比して古典の文語文や近代の文章が増え、一氣にむづかしくなつてゐる、といふ印象を受ける。夏目漱石や森鷗外の文章も登場したし、ラフカディオ・ハーンなる日本の風情を愛した西洋人がゐたことを初めて知る。
在學の途中、新制度の高等學校の生徒となり、「高等國語」といふ名の教科書で學ぶ。
ホイットマン、洪自誠、ロマン・ローラン、中村眞一郎、小山内薫らの文人や舞台藝術人らから多々教へられた。

posted by 國語問題協議會 at 09:47| Comment(0) | 大喜多俊一
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: