2015年07月21日

【☆はがき一枚の国語】日本語の表記  現代かなづい 大喜多俊一

「現代かなづかい」が施行されて十年ばかり經つても、まだそれには納得できないといふ文人も
多く、中でも評論家福田恆存氏と國語學者金田一京助氏との論争は激しく、世間の耳目を集め
た。
歴史的かなづかひに批判的であつた吉川幸次郎氏は次の漢語に正しいルビが振れるかとい
ふ問ひかけをしてゐる。合金・収拾・重量・縱横・從容の五語である。
「現代かなつかい」には漢語のよみを現代語音に基づくことを例示した多くの細則があつて、そ
れが中核になつてゐる。漢語を漢字で書けばそれは不問に付されてよいと、私は批判してゐる。

「現代かなづかい」は昭和二十一年十一月に内閣訓令第八號によつて、官民にその使用が強く慫慂(しようよう)
されたもので、今日まで改變されることなく、續けられてゐる文化のルールである。
昨今、これを見直したところ、次のやうな不十分な諸点に氣づいた。
一つは「現代かなづかい」が現代語音に基づいて調整されたものであるとはいひながら、
漢語・漢字のよみに關した部面に大きな配慮をした細則が中心であつて、漢字使用を幼兒にも薦めた
石井勳方式を実行すれば不問に付されてよいことである。
二つ目は、かなづかひの中核は用言の送りがなと助詞、助動詞の用法であるにもかかはらず、
そのことは強調されてをらず、ために漢字を少なめに使ふ。漢字含有率が低い文章は讀みにくい。
第三点は、第一の無駄に對する、人々の文化的視点の曖昧・鈍感さである。
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2015年05月13日

☆はがき一枚の国語  日本語の表記  縦書き・横書き

日本語の表記  縦書き・横書き 大喜多俊一

学校の授業時間割の表は、@の形が多く見られる。これは縱書きと横書きの入り交じつた形で、表の書き表し方として整ってゐない。
Aの形が正式である。Aを左へ九十度回囘轉させると横書きの正式な表になる。
多くの児童・生徒は@の表を見なれいる。これは目が慣性の法則に縛られたケース。

日本語は同じ内容を縱書きにしても横書きにしても書き表すことができる珍しい言葉だといはれる。
近年、數値や西洋の文字が多用されるので、横書きの使用が漸増してゐる一方、小説やその他のよみものはもちろん、新聞のスタイルも依然として縱書きが保たれてゐる。自家の標札を意圖的に横書きにしている人はこの現實をどう見てゐるのか。

俳句や短歌のスタイルは、私の感覚では、縱書き以外には考へられない。多分、それは慣れ。敢へて言へば物理學にいふ慣性の法則に則つてゐるのであらう。

讀み易さからいへば、人は兩眼が横竝びになってゐるので、横書きの方が速くよめるといふが、それは一、二行までのことであつて、幾行も竝べば縱書きの方が速いと氣づくのではないか。

私は、文語文と歴史的かなづかいは、縱書きでないと變だと思つてゐる。授業時間割.jpg
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2015年04月12日

【★はがき一枚の国語】 美しい日本語  蘊蓄の箪笥から 大喜多俊一


「蘊蓄の箪笥になぞらえて」と題して、記憶に留めておきたい言葉を十語選んで書
きとめたことがある。
例語を挙げる。
・あやに ・まほろば ・かぎろい ・海ゆかば などの大和言葉。
むづかしい漢語では、逍遙・睥睨・共倹・未曾有 など。
その昔小學校で使はれた用語では
都邑 ・梯形・操行。
戰時を思ひださせる ・遙拝 ・銃後・少國民 ・千人針。
今は見かけることも稀な ・虚無僧 ・ふくべ ・竹婦入。
そして失せた行爲・行動は、女兒の綾取り ・兵士の吶喊 等

蘊蓄とは學問や技藝の深い知識のこと。蘊は積む、蓄はたくはへるの意。
箪笥は家庭にある収納の道具で、大小の引き出しと開き戸があるのが特徴。蘊・箪・笥は常用漢字ではないが、知っておきたい。
箪笥にしまひ込んだ寶物が、次々に開き戸から現れるやうに、言葉の用意も夙(つと)に内に保つてゐて、いつでも繰り出してみたい。
となれば、使つてみようと、すてきな表現を捻出する。
「甲子園とそこに至る道は、汗と土と涙の少年史を刻む戰場です」
「非力な兩親が遺してくれた私がここにゐる。この事實を正視せずして何を恩顧といふでせう」
「出會ひの不思議、愛の喜悦、そして別れの不幸。ツ・ミート、ツ・ラヴ、アンドゼン ツ・パート。人生はかくあるか」
「自然の教へ山にあり。人生の道水にあり」
あなたの箪笥にはどんな表現が潜んでゐるか。

posted by 國語問題協議會 at 18:52| Comment(0) | 大喜多俊一