2021年07月24日

日本語ウォッチング(43)  織田多宇人

肩󠄁巾が廣い
 「肩󠄁巾が廣い」とか「大巾な賃上げ」等と、「幅」と書く可き所󠄁に「巾」を書く人が多い。勿論「肩󠄁幅が廣い」、「大幅な賃上げ」でなくてはならない。「幅」と「巾」とは全󠄁く別の字である。「幅」の音󠄁は「フク」、訓は「はば」であり、「幅員、幅跳(はばとび)、全󠄁幅、船幅」等の熟語を作る。一方、「巾」の音󠄁は「キン」で、一般的󠄁な訓は無いが「きれ、ふきん」の意󠄁味があり、「手巾、布巾、雜巾、頭巾」等の熟語を作る。從つて「肩󠄁巾」とか「大巾」では、「肩󠄁のきれ、大きなきれ」の意󠄁味となり何のことか分らない。同じ數を掛け合せる數學上の言葉で「(べき)」と言ふ言葉があるが、「当用漢字」に無いためこれを「巾」と書く場合がある。
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2021年06月25日

日本語ウォッチング(42) 織田多宇人

臆劫だった

 氣が進󠄁まない、氣乘りがしないことを「おつくふ」と言ふが「臆劫」と書いてあるのを見る事があるが、これは「億劫」でなければならない。「臆」も「億」も音󠄁は「オク」だが、訓は「臆」が「おしはかる、むね」であるのに對して「億」には特に訓はなく、普通󠄁「萬の一萬倍」を表す數の名として使はれる。また「劫」は音󠄁が「こふ、ごふ、けふ」で、訓は「おびやかす」だが、「劫」には「極めて長い時間」と言ふ意󠄁があるので「億劫」の元の意󠄁味は億と言ふ長い時間と言ふことになる。「氣が進󠄁まない」のも無理はないのである。なほ「おつくふ」は「おくこふ」の轉音󠄁である。因みに、圍碁では一目を雙方で交互に取り返󠄁せる形を「劫」と言ふ。決着が盡くまで長時間かゝるからである。そこで他の急󠄁所󠄁に打つてからでないと取り返󠄁せないルールがある。
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2021年05月23日

日本語ウォッチング(41)  織田多宇人

嗚咽をもらす

 「おえつ」をもらすと言ふときに「鳴咽」と書く者が極めて多い。正しくは「嗚咽」でなければならない。「鳴」ではなく「嗚」である。この字の存在自體を知らない者が多いのではないか。「鳴」の字の音󠄁は「メイ」で訓は「なく、なる」であることは誰でも知つてをり、熟語の「共鳴、悲鳴、雷鳴」等は馴染のふかいものである。一方「嗚」の方は音󠄁が「オ」で訓はため息をつくときの「あゝ」である。「嗚」一字でも「あゝ」だが、「嗚呼」と書いても「あゝ」である。「嗚呼」が「鳴呼」となつてゐることが何と多い事か、嗚呼!
posted by 國語問題協議會 at 17:37| Comment(0) | 織田多宇人