2024年12月07日

日本語ウォッチング(73)「藤󠄁椅子」/織田多宇人

藤󠄁椅子
 「籐椅子」を「藤󠄁椅子」と書いてゐるのを時々見かける。「籐」が常用漢字にないせゐなのかどうかは知らないが。「藤󠄁」の音󠄁は「トウ」で訓は「ふじ」である。「ふじ」は豆科の蔓草(つるくさ)で、藤󠄁蔓は強くて粘りがあるので繩の代用にするが「籐」とは別物である。「藤󠄁」は佐藤󠄁、藤󠄁田、藤󠄁原等の苗字に使はれ、「葛藤󠄁(かつとう)」と言ふ熟語を作るが、「藤󠄁」で作つた椅子があると言ふ話は聞かない。「籐(とう)」は熱帶に產する竹に似た蔓性の植物であり、自由に曲げられるのでこれで椅子を作る、それが「籐椅子」である。
posted by 國語問題協議會 at 10:45| Comment(0) | 織田多宇人

2024年10月19日

日本語ウォッチング(72)「竹籔」/織田多宇人

竹籔
「たけやぶ」が「竹籔」と書かれてゐることが間々ある。正しくは「竹藪」である。「藪」の音󠄁は「ソウ」で訓は「やぶ」である。一方「籔」の音󠄁は「ソウ」或いは「ス」で、訓は「ざる」である。やぶ蛇、やぶ蚊、やぶ醫者は全󠄁て「藪」であり、勿論竹やぶも「藪」である。ところが、竹やぶが「竹籔」と書かれてゐることが結構󠄁多い。竹冠のせいか竹やぶは竹に緣があるはずだとつい考へてしまふのではないか。
posted by 國語問題協議會 at 10:30| Comment(0) | 織田多宇人

2024年09月27日

日本語ウォッチング(71)「高見の見物」/織田多宇人

高見の見物
「高見の見物」と書かれてゐることが多い。「たかみのけんぶつ」とは。安全󠄁な高い所󠄁から低い所󠄁の騷ぎ等を見物すること、局外にあつて騷ぎを傍觀し關係しないことだが、「高みの見物」と書く可きである。現在は餘り用ゐられてゐないが強ひて漢字をあてれば「高處の見物」。「高見の見物」では意󠄁味が通󠄁らない。「遠󠄁見(とほみ)」が遠󠄁方を見ることであるやうに「高見」では高い所󠄁を見ることだと受󠄁取られかねない。
posted by 國語問題協議會 at 19:10| Comment(0) | 織田多宇人