2025年08月23日

かなづかひ名物百珍(47)「築󠄁地」/ア一カ

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 「築󠄁地(ついぢ)塀」は版築󠄁工法の土塀、また「築󠄁地(つきぢ)市場」はもと埋立地を意󠄁味する地名であった。この二つの語は同じ「ぢ(地)」でも音󠄁訓が異る。「ついぢ」は「つき(築󠄁)+ひぢ(泥)」のイ音󠄁便で、「土方(ひぢかた)歲三」でわかるやうに水分の多い土「ひぢ」の轉である。一方の「つきぢ」は埋立てて新しく築󠄁いた「地(ち)」で、字音󠄁由來である。
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 地名の「築󠄁地」は東京ばかりでなく、「ついぢ」「つきぢ」共に全󠄁國に廣く分布する。「つきぢ」の方が川岸や海沿󠄂ひにあるとも限らず、どちらの語に由來するのか穿鑿は容易ではない。「つきぢ」から「ついぢ」へと變化󠄁した可能性もあるだらう。

 さて「字音󠄁假名遣󠄁だけは發音󠄁どほりでよいのではないか」といふ意󠄁見は昔からあり、現實的󠄁な對處法であると筆者も思ふ。『廣辭林(大正14年初版)』はその嚆矢で、「ついぢ」「つきじ(ぢ)」兩語を的󠄁確に排列してゐる。語によっては音󠄁訓の別が判󠄁然としないし、またそれを日常するとも限らない。

 小學『日本國語大辭典(二版)』は最大規模の國語辭典であり、かつ最も標準とされる。編󠄁輯に携はった松井榮一氏の著作によると、古語も收錄するため和語のみ歷史的󠄁假名遣󠄁排列にする案がかなり有力であったらしい。結局はすべて現代假名遣󠄁順となり、「古語も現代假名遣󠄁で扱󠄁へる」實例を作ってしまったのは返󠄁す返󠄁す殘念な事であった。
posted by 國語問題協議會 at 07:15| Comment(0) | 高崎一郎

2025年08月02日

かなづかひ名物百珍(46)「龜戶」/ア一カ

[龜戸]
 關東の人は龜戶天~などで耳に馴染んだ地名だが、これをカメイドとするのは存外の難讀である。中間の「イ」の由來が判󠄁然としないからである。
[龜戸]
 『大日本地名辭書』に、土地の者は「龜ヶ井」に由來すると傳へるが、この地は島が陸地とつながったもので古稱「龜島」の轉であらうとした。この說は槪ね今も支持されてゐる。ただし各種辭典も歷史的󠄁假名遣󠄁を「かめゐど」とし、また龜戶天~や香取~社の境內には「龜ヶ井」の舊趾がある。
[龜戸]
 平󠄁成󠄁十五年には香取~社で新しい「龜ヶ井」が整備された。傳說は素直に樂しむのが一番よい。
posted by 國語問題協議會 at 14:30| Comment(0) | 高崎一郎

2025年07月11日

かなづかひ名物百珍(45)「杣(そま)づと」/ア一カ

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 奈良縣東吉野村にある「御菓子司 西善」の栗羊羹。「杣(そま)」は伐採󠄁用の山を指し、また「つと(苞・裹)」は「包󠄁み」の轉で土產物などを意󠄁味する。「藁づと」「家づと」など、現代表記でも何故か「ずと」とはしない。通󠄁常「つと」はさほど語意󠄁識の働く言葉ではないだらう。

 日本の髮型「つと(髱)」も同樣である。「角髱(かくづと)」「鷗髱(かもめづと)」「さげづと(下髱)」いづれも「づと」である。「髱」は「たぼ」ともいふ。

 「西善」では「嚴瓮最中」も製造󠄁してゐる。「嚴瓮(いつへ)」とは祭事に~酒を捧げる壺。こちらは~武東征傳說の慶事にちなむ。
posted by 國語問題協議會 at 19:40| Comment(0) | 高崎一郎