2021年07月03日

國語のこゝろ(8)「五十音󠄁圖は『密』がいい」/押井コ馬

【主󠄁な漢字の新舊對應表】
圖(図) 舊(舊) 對(對) 應(應) 單(単) 實(実) 惱(悩) 兒(児) 國(国) 覽(覧)

 今回は特別篇です。
 「五十音󠄁圖を書いて下さい」と言はれたら、「そんなの簡單」と思ふ人は多いでせう。しかし實際にやってもらふと、ヤ行やワ行で惱む人があまりにも多いものです。どう惱むのでせうか。
 また、最近󠄁は「五十音󠄁圖」「五十音󠄁表」といふ言葉そのものが、兒童ヘ育ヘ材の世界では死語になりつつある事をご存じでせうか。書店等で探しても、大抵は「五十音表」「五十音図」ではなく「あいうえおひょう」「ひらがなひょう」等と書かれてゐるのです。
 國語ヘ育の根幹とも呼ぶべき「五十音󠄁圖」。これは單なる「かな一覽表」でせうか、それとも更に意󠄁味があるのでせうか。昔ながらの五十音󠄁圖で、ヤ行の「い」「え」やワ行の「う」に、ア行と同じかなを入れるのはどうしてでせうか。私が過去に書いたりまとめたものを是非御覽下さい。

■絶滅危惧種の「五十音表」を守れ!
http://osito.jp/minkana/50on.html

■五十音の日に、五十音について解説
https://twitter.com/hngymdojin/status/1259295270841356288

■「を」がウ段やイ段の「あいうえお表」にご注意
https://togetter.com/li/915145

■【悲報】市販のあいうえお表の半分以上が「を」をウ段やイ段に配置?!!
https://togetter.com/li/957572
posted by 國語問題協議會 at 18:45| Comment(0) | 押井コ馬

2021年06月25日

日本語ウォッチング(42) 織田多宇人

臆劫だった

 氣が進󠄁まない、氣乘りがしないことを「おつくふ」と言ふが「臆劫」と書いてあるのを見る事があるが、これは「億劫」でなければならない。「臆」も「億」も音󠄁は「オク」だが、訓は「臆」が「おしはかる、むね」であるのに對して「億」には特に訓はなく、普通󠄁「萬の一萬倍」を表す數の名として使はれる。また「劫」は音󠄁が「こふ、ごふ、けふ」で、訓は「おびやかす」だが、「劫」には「極めて長い時間」と言ふ意󠄁があるので「億劫」の元の意󠄁味は億と言ふ長い時間と言ふことになる。「氣が進󠄁まない」のも無理はないのである。なほ「おつくふ」は「おくこふ」の轉音󠄁である。因みに、圍碁では一目を雙方で交互に取り返󠄁せる形を「劫」と言ふ。決着が盡くまで長時間かゝるからである。そこで他の急󠄁所󠄁に打つてからでないと取り返󠄁せないルールがある。
posted by 國語問題協議會 at 07:00| Comment(0) | 織田多宇人

2021年06月20日

かなづかひ名物百珍(9)「をちこち」/ア一カ

[遠近]
[遠近]
[遠近]

 名古屋の老舖、兩口屋是C製造󠄁の銘菓。

 「をちこち」とは「あちらこちら」「將來と現在」などの意󠄁味の古語で、漢字は「遠󠄁近󠄁・彼方此方」を宛てる。「遠󠄁」は漢音󠄁ヱン吳音󠄁ヲンであり、「近󠄁」は漢音󠄁キン吳音󠄁コンであるから、如何にも「遠󠄁近󠄁」の音󠄁讀みであるやうな印象だが、どうやら純然たる和語のやうだ。「-ン」と「-チ」は漢字音󠄁としてじつは近󠄁く、たとへば「斡・乾幹翰」「逸・免挽晩勉」「辣・懶」「蝨・訊迅󠄁」「咽・因恩」「割󠄀・憲󠄁」「訐・干刊」「薩・產彦」「撒・散」「閼」「妲・但旦」「榲膃・温」のやうに結構󠄁交替するのである。

 蕪村の「遠󠄁近󠄁(をちこち)ををちこちと打つ砧(きぬた)かな」は擬音󠄁語をうまく使った句として知られる。漢字音󠄁としての「遠󠄁近󠄁(ヱンキン)」も、偶然とは思へないほどよく似たリズム感を感じる。
posted by 國語問題協議會 at 11:35| Comment(0) | 高崎一郎